f(x)=∫_0^1 |e^t-x|dtをGeoGebraで図示する
謝辞
永島 豪 先生(@Go_Nagashima)には、本稿の着想を得るきっかけを与えて頂きました。感謝申し上げます。
課題
のグラフをGeoGebraで図示したい。どのようにすればよいか。
うまくいかない方法
定積分を返すコマンドである
Integral[<関数>,<開始値>,<終了値>]
は、CASモードを除き、多変数関数に対応していないようである。
CASモードで
Integral[abs(ℯ^t - x),t,0,1]
を入力すると、
sgn(x - 1) + x sgn(-ℯ + x) - ℯ sgn(-ℯ + x)
が返される。しかし、この結果は、x<=1またはx>=eの場合のみ妥当し、1<x<eには妥当しない。すなわち、 1<x<eの場合に、正しい結果(-3x+2xlog(x)+e+1)を返せていない。
解答例
現時点では、多少面倒くさいが、Locusコマンドを使った下記の方法が有用である。
①数値オブジェクトkを作成する。
②kのプロパティで、「スライダー」タブの「最小」をx(Corner[1])に、「最大」をx(Corner[2])に設定する。増分は何でも良い。
x(Corner[1])は、GeoGebraのグラフィックスビューの左下隅のx座標である。x(Corner[2])は、GeoGebraのグラフィックスビューの右下隅のx座標である。つまり、②の操作は、kのとりうる区間を、x軸のうち現在表示されている部分に揃えるという意味がある。
③kが非表示になっている場合は、表示する。
④入力バーに、
Locus[(k, Integral[abs(ℯ^x - k), 0, 1]), k]
と入力する。すると、下図のように、求めるグラフが表示される。
解説
まず、定積分
を計算する。
GeoGebraでは、
Integral[abs(ℯ^x - k), 0, 1]
で計算可能である。
この定積分の値は、kによって、下図のように変化していく。
kを横軸にとって、この定積分の値の変化をグラフに描けば、求めたいグラフとなる。
このグラフを描くため、まずは、x座標がk、y座標がIntegral[abs(ℯ^x - k), 0, 1]である点オブジェクト
P=(k, Integral[abs(ℯ^x - k), 0, 1])
を作成しよう。Pは、kを動かすと、下図のような軌跡を描く(この軌跡は、Pの残像表示をONにすれば得られる)。
Pの軌跡を、上記のようなとびとびの残像ではなく、連続的な軌跡オブジェクトとして描くには、Locusコマンドを使えば良い。すなわち、
Locus[P,k]
と入力バーに入力すれば得られる。(なお、スライダーkを非表示にすると、軌跡がうまく描かれないので、注意されたい。)
上記「解答例」の④で述べた数式
Locus[(k, Integral[abs(ℯ^x - k), 0, 1]), k]
は、Locus[P,k]のPの部分を、Pの定義式(k, Integral[abs(ℯ^x - k), 0, 1])に置き換えたものであり、両者は同値である。
なお、描かれる軌跡は、kのスライダーの区間に限定される。上記「解答例」②で、kのとりうる区間を、x軸のうち現在表示されている部分に揃えたのは、軌跡を画面全体にわたって描くためである。
別に画面全体にわたって描く必要はなく、例えばkが-3〜3の間だけ描けばよいという場合には、kの区間を-3〜3にすればよい。